

目次 もっと見る
もっと見る飲食店や小売店など、店舗を開業する際には多くの資金が必要になりますよね。
こうした負担を軽減するために、店舗開業時に利用できるさまざまな助成金が用意されています。今回は2025年3月の時点で店舗開業時に利用できる助成金について解説します。助成金を上手に利用して、店舗開業を成功させましょう。
店舗開業の際に利用できる助成金・補助金とは

どのような店舗を開業する場合でも、資金繰りは非常に大切です。
しかし借金や融資によって資金を調達する場合、将来的に返済しなくてはなりません。店舗を開業したからといって必ずしも大きく儲けが出るとは限りませんので、借金を抱えることは精神的にも負担が大きいことでしょう。
そこで、国や地方公共団体から支給される助成金や補助金を利用すれば、返済義務がありません。受給には審査が必要ですが、助成金や補助金を受け取ることができれば店舗の開業はよりスムーズに進みます。
助成金と補助金の違い
「助成金」と「補助金」は同じような意味に感じられますが、厳密には異なります。
「助成金」は、主に厚生労働省や地方自治体が実施しているものです。企業や民間団体、個人事業主などが受け取ることができ、人材雇用や育成に利用できます。支給額は一律となっていることが多く、条件を満たせば満額を受け取ることができます。
これに対して「補助金」は、経済産業省が管轄している場合が多いです。
支給の目的や対象は助成金と同じですが、補助金支給には審査があり、支給額は実際にどのくらい支出があったかによって上限が決まっています。企業の業績や評価も支給額の算出に関わってくる場合がありますので、助成金に比べると補助金のほうがハードルが高いといえるでしょう。
店舗開業資金として助成金・補助金は使えない?
注意していただきたいことは、助成金・補助金は店舗開業時の事業が完了してから支給されるということです。
まず助成金は事業(店舗開業)が完成してから申請し、その後支給されるまで約2〜3カ月かかります。また補助金は申請してから事業(店舗開業)を進め、完了後支給されるまで約1年かかります。
どちらの場合も後払いであり、開業時の設備資金や諸費用は自前で用意することが必要です。
とは言え、助成金は開業後の運転資金として使えますから、初期投資額は節約できます。
したがって本記事では、店舗開業資金として助成金は利用できると記載します。
助成金・補助金には税金がかかる
助成金・補助金は支援してもらうお金だから、税金はかからないと考える方がいるかもしれません。
しかし助成金・補助金は営業外収益に当たるため、税金がかかります。所得税・法人税の対象となりますが、消費税はかかりません。
飲食店の店舗開業資金に利用できる補助金一覧

この章では飲食店の開業に関係した補助金について解説していきます。
- 事業承継・引継ぎ補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- IT導入補助金
- 受動喫煙防止対策助成金
- 小規模事業者持続化補助金(通常枠)
- 中小企業新事業進出補助金
1.事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業を引き継ぐことで新しい取り組みを行う中小企業、あるいは事業再編や統合に伴う経営資源の引き継ぎを行う中小企業を支援する制度です。
たとえば廃業を予定している飲食店から経営資源(設備・従業員・顧客等を一体化したもの)を引き継ぎ、法人あるいは個人事業主として開業する場合に適用できます。
補助率は補助対象経費の2/3または1/2までで、補助金の下限は100万円、上限は600万円または800万円以内です。補助率および補助金額は、補助対象者の要件により異なります。
2.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
こちらの補助金は、中小企業・小規模事業者が行う、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの省力化に必要な設備投資等を支援する補助金です。
たとえば調理の効率化を目的とした、調理ロボットなどの厨房機器システムを導入するケースに適用できます。
補助率の上限は2/3ですが、補助上限額は、従業員が5人以下の場合に750万円から、100人以上の場合に最大1億円までと幅があります。
3.IT導入補助金
IT導入補助金は、近年普及が進められているITツールの導入に関して、中小企業や小規模事業者の労働生産性の向上を目的とした補助金です。たとえば飲食店(カフェ)において、タッチパネル式セルフオーダーシステムを導入するのに活用されています。
補助額は補助対象者の要件により異なります。
4.受動喫煙防止対策助成金
これは補助金ではなく助成金ですが、設備投資に関わるため提示します。
受動喫煙防止対策助成金は、中小企業が受動喫煙を防止するための対策を行う場合に適用される助成金です。分煙のための施設を設置する際などに支給されます。
飲食店の喫煙室設置において、工費、設備費、備品費、機械装置費などの2/3が支給され、上限は100万円です。着工までに申請する必要があり、支給されるのは工事終了後になります。
ただし2024年度の申請受付は終了しており、新年度の受付は4月以降になると思われます。
5. 小規模事業者持続化補助金(通常枠)
小規模事業者が自社の経営を見直し、経営計画を作成した上で、販路開拓や生産性向上に取組むのを支援する制度です。飲食店にとっても販路開拓は重要な戦略といえるでしょう。
ウェブサイトを活用した広報費や店舗改装の外注費が補助対象となりえます。補助率は2/3までで、補助金の上限額は50万円です。
インボイス特例の条件を満たす場合は、さらに50万円が上乗せされます。
6.中小企業新事業進出補助金
企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等に対する補助金です。
事業者にとって新サービスを新規顧客に提供する新たな挑戦であることが必要条件です。
設備投資費用や技術導入費、広告宣伝費などが補助対象となりえます。
ただし付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加するなどの要件を満たすことが必要です。
補助率は1/2で、補助額は従業員数等の要件により決まり、750万円〜9000万円です。
この補助金制度は2025年から始まる新制度であり、3月現在は公募開始時期を調整中です。
店舗開業時の人材雇用に利用できる助成金一覧

店舗を運営するには人材の雇用が必要になります。また社内で人材育成を行う場合にも資金が必要になることでしょう。
この章では人材雇用や人材育成に利用できる助成金をご紹介します。
1.キャリアアップ助成金
2.トライアル雇用助成金
3.特定求職者雇用開発助成金
4.65歳超雇用推進助成金
5.早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)
6.働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
1.キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者が企業内でキャリアアップするために、正社員化または処遇改善の取り組みを実施した事業者に対して支給される助成金です。
「正社員化コース」「賃金規定等改定コース」「社会保険適用時処遇改善コース」など6つのコースが用意されており、それぞれ支給額や対象の規定が異なります。該当するコースの内容を確認し、申請を行ってください。
2.トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、職業経験や技能・知識の欠如などから安定した就職が難しい方を、ハローワークなどから紹介を受けて、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試用(トライアル)雇用した事業主に支給される助成金です。
支給対象となる雇用期間は1カ月単位で最長3か月であり、1週間の所定労働時間が30時間以上であることが必要です。助成金は労働者一人に対して4万円ですが、対象労働者が母子家庭の母等、もしくは父子家庭の父の場合は5万円が支給されます。
3.特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者、もしくは障害者など、就職が難しい求職者をハローワーク等から紹介を受け、雇用保険の一般被保険者である労働者として継続雇用を行った事業者に向けて支給されます。
支給額は30万円~240万円となっています。支給額だけでなく対象期間についても労働者の要件によって異なりますので、どの要件に当てはまるかをチェックしながら助成金の額を算出してください。
4.65歳超雇用推進助成金
65歳以上への定年引上げなど、高年齢労働者の有期契約労働者を無期雇用へ転換を行う事業主に対して支給されます。高齢者が意欲と能力がある限り働ける生涯現役社会を実現するための制度です。
以下の3つのコースが含まれ、対象者の要件により支給額が異なります。
- 65歳超継続雇用促進コース
15万円〜160万円
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
中小企業の助成率:60%
- 高年齢者無期雇用転換コース
中小企業の支給額:対象労働者1人につき30万円
5. 早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)
再就職援助計画などの対象者を離職後3か月以内に、期間を定めのない労働者として雇い入れ、継続して雇用することが確実である事業主に対して支給されます。
助成金の支給額は以下のとおりです。
- 早期雇入れ支援:支給対象者1人につき30万円または40万円
- 人材育成支援:480円/時間〜60万円を加算
支給額は対象者の要件により異なります。
6. 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
時間外労働を減らし、年次有給休暇や特別休暇を促す環境整備に取り組む中小企業事業主に支給される助成金です。支給額の上限は労働者数や時間外労働時間などの要件によって異なり、15万円〜160万円です。
なお2024年度の交付申請の受付は終了しており、2025年度の受付は4月以降になると思われます。
助成金は事業プランに合ったものを選ぼう

ここまでご紹介したもの以外にも、店舗開業時に受けられる助成金や補助金には非常に多くの種類が存在します。
また厚生労働省や経済産業省以外に、各自治体から独自の助成金が実施される場合もあります。
さらに、「軽減税率対策補助金」「雇用調整助成金(能登半島地震及び豪雨に係る新たな特例措置)」のように、社会情勢によって期間限定で行われる助成金や補助金も存在します。
どのような助成金があるかは、店舗の開業を行う際にその都度調べるようにしましょう。
助成金や補助金のリストは、厚生労働省や経済産業省、中小企業庁のホームページなどから検索することができます。各自治体のホームページも定期的に確認すると良いでしょう。
また、中小企業向けのビジネス支援サイトである「J-Net21」にも、助成金や補助金の案内が出ています。こうしたサイトも活用してみてください。
まとめ
店舗開業における助成金や補助金は、審査こそありますが返済義務のない「資金」です。経費の全てをまかなうことはできませんが、事業運営に役立つことは間違いありません。
膨大な数の助成金や補助金を把握することが難しい場合は、税理士に相談するのも選択肢の一つです。
税理士は時期によって変化する助成金の概要にも精通していますので、ご自身の店舗開業や事業運営にはどのような助成金が出る可能性があるのかを的確に判断してくれます。
中小企業や小規模事業者に勢いがあると、日本全体の景気が活性化していきます。ぜひ助成金や補助金を有効活用して、店舗開業の土台を整えてください。